動かせない障害物を巡っては、勘違いをしている人が沢山います。
私がブラジルで駐在員生活をしていた時に、ゴルフのオープン競技会に出たことがあります。
その時のことです。
これは、とんでもない例なので読まれるとビックリされるかもしれません。
私の組は、開催クラブのメンバーである私と、他のクラブから参加の18歳、と50歳の3人でした。
スタート後間もないホールで、18歳のプレーヤーが、ラフのボールを突然ピックアップすると宣言しました。
マーカーの50歳のプレーヤーが、何故ピックアップするのか尋ねました。
すると、「自分のボールとホールを結ぶ線に木があり、このままスウィングをするとこの木にクラブがあたる。
この木は動かせない障害物だから、スウィングできるところにドロップする。」と言いました。
このマーカーである50歳のプレーヤーは、「ボールを動かすのは勝手だが、ペナルティが科せられますよ」と伝えました。
するとこの18歳のプレーヤーは「動かせるはずだ」と言って聞く耳を持ちません。
挙句の果てには「ルール上認められた行為を邪魔している。
この一打で優勝できなかったらどうしてくれるのか。」と言い出す始末でした。
私にも意見を求められたので、「私はレフェリーでないということ、そしてゴルフのプレーは自分の責任でして下さい。」と言いました。
しかし、会話がポルトガル語だったのでうまく説明できず、この18歳のプレーヤーは結局競技委員を呼んでしまいました。
競技委員も呆れていましたが、
このように一度間違えて覚えてしまうと、その後も同じ場面になったときに、ごく自然に間違った行為を繰り返すことに為ります。
実は、この18歳のプレーヤーは、あと一回とんでもない間違いをしでかしました。
彼は、この後自分のルールの知識が間違っていると思ったのか、コース上にある表示杭(青杭)がスウィングに邪魔なときでも抜かずに競技を続けました。
さすがに途中で彼のキャディーが表示杭は抜いても構わないことを伝えたようでした。
その後です、とんでもないことが起きたのは。
この18歳のプレーヤーのボールがOB杭の近くまで行きました。
マーカーを呼んで、OBであるかどうかの確認を求めました。
OBでないことを確認したマーカーは、プレーをそのまま続行するようこの18歳のプレーヤーに伝えました。
すると、突然白杭を抜き、ショットしてしまいました。
マーカーも見ておらず、18歳のキャディーも見ておらず、その行為を止める者がいなかったので、「やってしまった」のです。
白杭は抜いてはいけないものであることを知らなかったことによる悲劇です。
私と私のキャディー、そしてマーカーのキャディーが見ていましたので、マーカーに伝え、白杭を抜いた行為を確認してもらいました。
この18歳のプレーヤーは、ルールを勝手に解釈して、困難な場面では常に「救済」が受けられると思い込んでしまっていたのでしょう。
ルールを知っていると知っていないとでは、この様な場面でもスコアに影響してくることが分かります。
実は、この18歳のプレーヤーには、母親がギャラリーとして付いて回っていました。
この母親は息子が余程心配だったようで途中何回かこの息子と話をするだけではなく、キャディーとも話をしていました。
マーカーである50歳のプレーヤーが、「アドバイスになるよ」と注意をしていましたが、止むことがなく続きました。
そして何とこの母親は、グリーンの近くまで来て、キャディーと一緒になり堂々とラインを読み始めました。
さすがに呆れてしまいました。
ハーフターンの前にマーカーが競技委員にこの事実を伝えたところ、この18歳のプレーヤーはよっぽど恥ずかしくなったのでしょう、競技続行を自ら棄権しました。
この18歳のプレーヤーはオープン競技会といえども、出場するには、ルールを知らな過ぎました。
これは、競技会での話ですが、プライベートのラウンドであっても正しく処置し、同伴者が気持ちよくラウンドできるように心がけたいものです。
そのためには、ルールブックをいつも携帯し、確認する癖をつけましょう。